現在、建設業界では工業化がどんどん進んでいますが、先日DX(デジタルトランスフォーメーション)についてある勉強会にオンラインで参加しました。
その勉強会の最後でおすすめされた「アフターデジタル」という書籍があり、とても面白かったので紹介します。
株式会社ビービットの藤井保文さんとIT批評家の尾原和啓さんが著者となっています。
目次
「デジタル先進国」として主に中国の事例を挙げている
金融会社 アント・ファイナンシャルの例
信用スコアの算出
デジタル決済が日本よりも浸透しており、あらゆる消費者の購買行動のデータを蓄積しています。
特にこの書籍で例に挙げられているアプリ決済サービス「アリペイ」の機能の1つ「ジーマ・クレジット」は、それらの蓄積されたデータをAIでデータ分析してユーザーの「信用スコア」を算出しています。
出身大学や職業を自分で登録することでそのスコアを上げることもできます。
民度の向上
このようにスコアを上げることにより社会的な信用度が上がり、ローンを組みやすくなるなどのメリットにつながります。
これにより、もともとあった階級社会の格差を乗り越え、努力すればいい待遇が受けられる仕組みに是正され、中国人の民度が上がっているようです。
保険会社 中国平安保険グループの例
顧客と寄り添う業務形態
「平安グッドドクターアプリ」という医療系アプリは前述したような信用スコアにより医師が評価され、それにより患者は信頼できる医師を選ぶことができます。
また、保険は一度契約するとけがや病気などがない限り企業の営業担当が顧客と接する機会はなくなりますが、このアプリを顧客に利用してもらうことによりその顧客の行動データが蓄積され、そのデータを元に企業の営業担当は顧客にさまざまな提案をすることができます。
アプリを説明してインストール方法を案内する段階から、契約して顧客と接する段階までずっと顧客と寄り添うことを重視しています。
(正確にいうとアプリインストールは無料であり契約前である。顧客がアプリを気に入れば契約する流れとなる。)
意外にも人間の仕事は増える
そしてここで意外に思うことは、デジタル化が進むと人間がAIに仕事を奪われるように思われますが、この例でいう営業担当のように人間の仕事は実際に増えるようになります。
また、顧客とこのように接することで、より一層深い信頼関係を築き上げる業務形態となります。
スーパーマーケット フーマーの例
オンラインとオフラインの融合
スーパーマーケットでもあり、生鮮食品を配送する倉庫でもあり、生鮮食品の実践販売の場でもあり、レストランでもあるという、オンラインとオフラインのいいところを組み合わせた業務形態をとっています。
オンライン注文をする顧客もいれば、実店舗を訪れフードコートで海鮮料理を調理しているところを見たり、調理したばかりの海鮮料理を食べたりすることができることにより、顧客の興味を惹いたり信頼を得ることができます。
DXにおける大事な考え方
オンラインとオフラインの融合
一見全てをデジタル化するべきという考え方に陥りがちですが、3つ目のフーマーの例にあるように、オンラインとオフラインの両者が溶け合うという考え方が大事です。
これについて正確に理解するためには、短い文章で説明することができないため、興味がある人は是非「アフターデジタル」を実際に手に取って確認していただきたいと思います。
建設業界ではどう活かすか
このDXの事例を建設業界に照らし合わせるとすると、ここからはありきたりではありますが完全に私の見解になります。
新しい技術や工法の現場導入
建設機械を扱っている企業や、建設会社によっては技術開発などの部署をもつところもあると思いますが、その企業や部署が各建設現場に新しい技術や工法を紹介し試行していくことだと思います。
新しい技術や工法を紹介することを上述した「保険会社の営業」もしくは「オフライン」の例に該当し、新しい技術や工法自体が「アプリ」や「オンライン」の例に該当すると思います。
そして、それらを試行する前の現場導入のための打合わせや、試行後の現場での使い勝手や効果などのヒアリングが「顧客とずっと寄り添うことを重視している営業担当」の例に該当すると思います。
ここまでの話はほとんど社内営業的な活動になってしまいますが、この活動を通じて工事の工期短縮やコスト削減を図ることができれば、入札における客先への効果的なプレゼンと案件獲得にも繋がると思います。
そしてそれらが時短に繋がれば、建設業界全体の労働環境の改善にも繋がります。
建設キャリアアップシステム
最近運用されるようになった建設キャリアアップシステムは、上述した「信用スコア」の獲得に該当すると思うので、このシステムをさらに幅広く運用していくことが大事だと思います。
まとめ
以上、デジタル化による変化は次の通りになります。
・信用スコアにより民度が上がる
・実際に人間の仕事は増える
・企業と顧客の間にはより一層深い信頼関係が生まれる
DXにおける大事な考え方についてもっと詳しく知りたい人は、「アフターデジタル」を手に取ってみてください。