「築10年になるけど、そろそろリフォームをした方がいいかな?」
「リフォームにはお金がかかるけど、どこまでかければいいの?」
「自分の物件に新たな入居者がすぐ見つからなかったらどうしよう。」
不動産投資家の中には、このような空室リスクに不安を抱いている人は少なくないでしょう。上手くリフォームすれば客付けや家賃の値上げができますが、リフォームの計画を間違えると大きな損失に繋がるため注意が必要です。
この記事を読めば、どのように考えてリフォームすれば良いかわかります。一級建築士としてマンションの物件に携わった経験があり、都内に3件の不動産を所有している私がわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みください。
不動産投資物件をリフォームする2つのメリット
まずは不動産投資におけるリフォームのメリットを解説します。
リフォームにより魅力的な物件にすることで大きな損失を防ぐとともに、工夫次第では大きな収益に繋がります。
- 空室対策になる
- 家賃が上がる
1. 空室対策になる
入居者の居住期間が長くなる、もしくは退去しても新しい入居者がすぐに決まることで、空室対策ができます。
リフォームによって物件の付加価値が上がり魅力的になり、入居希望者が増えるからです。
冷暖房設備や給湯器の交換、キッチンや浴室など水回りの修繕により生活が快適になれば、入居者は長く住みたいと思うようになります。
また、入居者のニーズを想定し、そのニーズに合わせたリフォームができれば、競合物件と差別化して入居希望者がさらに増えます。例えば、想定した年代の入居者が好む壁紙や床材の柄を上手く選定できれば、入居希望者の目を惹けるでしょう。
2. 家賃が上がる
物件の付加価値が上昇することで、家賃を上げられます。
競合する物件よりも居住性が良くなることで、家賃が値上がりしても入居したいと思う希望者は一定数います。
実際に、家賃7万円の物件をリフォームした後、8万円に値上げして入居者が決まった事例もありました。
リフォームの規模によってはリフォーム代が高くなることにより全体の収益が下がることもあるため、事前にリフォーム代と値上する家賃の収支バランスを検討しましょう。
不動産投資物件をリフォームする2つのデメリット
リフォームによるデメリットを解説します。
デメリットを把握せずにリフォームすると、かえって損失を出してしまい無駄な手間をかけることになります。
- リフォーム完了までに時間がかかる
- 融資が通らないことがある
1. リフォーム完了までに時間がかかる
リフォームには長い時間がかかるため、それまで入居希望者に内覧してもらえず、その分入居する時期も遅れます。
通常1週間程かかり、規模が大きくなると数カ月を要することも少なくありません。
例えば、壁紙や床材などの軽微な内装リフォームであれば1週間程ですが、キッチンや浴室など水回りを全面的にリフォームする場合は数カ月かかります。
リフォームが終わり新しい入居者が現れるまでの期間は家賃収入が入らないことを考慮して、リフォーム期間や収支の調整が必要です。
2. 融資が通らないことがある
リフォームでローンを組むときは、審査が通らないこともよくあります。もしくは、住宅ローンの審査が通らず、金利が高いリフォームローンで審査が通る可能性もあります。
住宅ローンの金利は0.5~2.0%ですが、リフォームローンは2.0~4.0%であるため、この2つの金利は大きな差です。
ローンを組むときは、その金利による支出も考慮してリフォームを計画しましょう。
リフォームの前にまずチェックすること
リフォームには大きなコストがかかります。リフォームを決断する前になぜ空室になるのか原因を考え、他にも安価に対策ができるか検討が大事です。
大きな金額をかけたにもかかわらず、リフォームしても入居希望者は現れない可能性があります。
コストを抑えながらできる対策や工夫の例を以下に挙げます。
- 家賃の値下げ
- 広告宣伝のやり方の見直し
- 募集条件の緩和(ペット飼育可、楽器可、SOHO可、クレジット払い可にするなど)
- 入居時から数か月分の家賃を無料にするフリーレントの導入
不動産投資におけるリフォームのタイミング
リフォームするタイミングは遅すぎると著しい経年劣化に繋がり、早すぎると無駄なリフォーム代がかかります。
タイミングの目安は築10年前後、かつ入居者が退去したときです。
それぞれの理由を解説します。
築10年前後
キッチンや給湯器、バスやトイレなど設備機器をリフォームするタイミングは築10年前後が最適です。
多くの設備機器のメーカー保証期間は10年であることが多く、この期間を大幅に過ぎると劣化が進み故障やトラブルが発生する可能性があります。
入居者からクレームが入り、家賃の引き下げや賠償を求められることもあります。我々オーナーに対しての信用問題にも繋がるでしょう。事前にリフォームする場合よりも大きなコストと手間がかかってしまうため、注意が必要です。
よって、築10年前後のタイミングでリフォームすることで、入居者にとって快適な生活環境を維持できます。また、新しい設備機器の導入により節水や節電など省エネ効果があり、入居者の満足と長期にわたる入居へ繋がります。
入居者が退去した後
入居中の物件はリフォームできないため、入居者が退去したときが目安です。
このタイミングを逃すと次のリフォームはさらに数年後になってしまいます。事前にリフォームを計画しておくことが重要です。
退去後は築10年ではなくても壁紙や床材など、軽微なリフォームに関連する部分の汚れや傷はチェックしましょう。
各箇所のリフォーム内容と相場
リフォームには主にどのような作業があるのか、相場はどれくらいなのかを把握しておかなければいけません。
リフォーム会社によっては非常に高い見積額を提示してくることがあります。
ここで解説する相場を参考にして、受け取った見積額が妥当であるかどうか判断してください。
- 床材
- 壁紙
- 浴室
- トイレ
- キッチン
床材
床材は部屋の雰囲気を変え、入居者の印象をよくすることで入居希望者の増加に繋がります。
全ての部屋を張り替える必要はなく、特に損傷が激しい部屋を中心に張り替えやクリーニングするにより、コストを抑えられます。
張り替える範囲は部分的ではなく、部屋全体がおすすめです。現状の床材と同じ製品が入手できない、もしくは既存の床材が劣化し変色しているため、新しい床材の色や柄を合わせるのは困難であるからです。
空室期間が長いときは、競合物件との差別化を図るために、損傷の有無にかかわらず張り替えを検討しましょう。
主にフロアタイル、フローリング、クッションフロアの3種類があります。
それぞれ解説します。
フロアタイル
塩ビ素材によって製造された床材です。
木目やオニックス(天然石のような柄)、石粒といったデザインを表現した凹凸加工があり、色柄が豊富に選べます。土足対応でキズにも強く機能性に優れており、耐久性や耐水性もあります。
フロアタイルの相場は以下のとおりです。
フローリング
板状の木材を使用した床材です。
主な張り方は既存の床をはがしてフローリングを張り替える方法と、既存の床の上から重ね張りする方法があります。材質は無垢材と合板製の2種類に分類されます。
無垢材は自然素材の一枚板で、独特の風合いが美しく高級感がありますが、傷つきやすく割れや収縮など起きることが特徴です。
合板製は薄い板を何枚も重ねて加工したもので、品質が均一で手入れがしやすいことが特徴です。耐久性があるため、集合住宅で多く使われています。
張り方による費用の相場は以下のとおりです。
既存の床材の張り替え:1畳あたり3~6万円
既存の床材に重ね張り:1畳あたり2~5万円
クッションフロア
名前の通りクッション性に優れ、塩化ビニール系の素材でできた床材です。耐水性や防音性があり、アパートやマンションなどの賃貸物件をリフォームするときに多く使われています。
クッションフロアの費用の相場は以下のとおりです。
壁紙
資産価値を高めるために重要な部分です。経年劣化や入居者の利用による壁の汚れが気になるときは、壁紙を張り替えることで奇麗になります。
床材と同様に、新しい壁紙の色や柄を合わせるのは困難なため、張り替える範囲は部屋全体がおすすめです。
壁紙の費用の相場は以下のとおりです。
浴室
浴室の床や浴槽が劣化している場合、それらのパーツを取り替えることで改善できます。
浴槽の取り換えは15~20年、防水性を確保するためのシーリングは7~10年が目安です。シーリングの劣化が著しい場合は、漏水など不具合に繋がるため、剥がれやひび割れなど劣化状況を確認しましょう。
浴室の各リフォーム費用の相場は以下のとおりです。
浴槽の取り換え:5~10万円
シーリング:1~3万円
浴槽のコーティング:7~13万円
浴室の壁の修繕:約10万円
ユニットバスすべて取り替え:90~100万円以上
トイレ
トイレの交換時期は15~20年が目安です。
中古物件には和式トイレが設置されていることもあります。清潔感や利便性を持たせるために、洋式のトイレに取り替えが必要です。配管経路やウォシュレット用のコンセントの有無などにより費用が変わるため、事前に確認しましょう。
ウォシュレットはインターネットなどで設置方法を調べれば、専門的な知識を持たない人でも設置できます。業者に設置を依頼する場合は、追加で費用がかかります。
各リフォーム費用の相場は以下のとおりです。
和式トイレから洋式トイレに取り替え:10~30万円
ウォシュレットの購入:1~10万円
業者に依頼するウォシュレットの設置:約2万円
キッチン
キッチンは油汚れや湿気や傷により劣化するため、交換時期は15~20年が目安です。
掃除のしやすさ、収納の有無、湯温調整機能の有無を重点にチェックしましょう。
あまり予算をかけられない場合は、システムキッチンではなく公団キッチンを導入することで費用を抑えられます。流し台やコンロが一体型になったものがシステムキッチン、一体型ではないものが公団キッチンです。
各リフォーム費用の相場は以下のとおりです。
システムキッチンに交換:50~100万円
公団キッチンに交換:10万円以下
リフォームにおける利回りの計算方法
リフォームに大きな金額をかけすぎてしまうと、家賃増額による効果が低くなってしまいます。逆に、金額を抑え過ぎてしまうと、入居希望者が現れず、家賃の増額も期待できません。
そこで、リフォーム代を判断する目安として利回りという考え方があります。利回りの計算式は以下のようになります。
簡単に言うと、増額した家賃に対するリフォーム代の割合です。
リフォーム規模の大きさにより、利回りは以下の2つが目安です。
壁紙や床材などの修繕(軽微なリフォーム):約20%
設備機器の交換や間取りの変更(大規模なリフォーム):約12%
例として、原状回復工事のような表層リフォームで月額家賃が60,000円の部屋を500,000円でリフォームし、リフォーム後の家賃が65,000円だとします。すると、利回りの計算は以下のようになります。
(65,000-60,000)×12÷500,000=12%
よって、このリフォーム代は目安として相応しいことが判断できるでしょう。
【まとめ】適切なリフォームの予算内で入居者のニーズに合わせる
リフォームによる不動産投資の空室対策について解説しました。
リフォームはとても大切ですが、計画を間違えると大きな損失に繋がります。収支のバランスが取れたリフォーム代と、その予算内における入居者のニーズに合わせたリフォーム内容の検討が必要です。
ここで解説したことを参考にして、リフォームを検討してみてください。